きみのためのプレゼント
彼はそう言った後、突然真顔になった。空気が変わった気がする。その表情からも目が離せない。好きな人のどんな表情も見逃したくない。


ドクンドクンと心臓の音が聞こえてくるようで、それは私のものなのか、藤本くんのものなのかわからない。ただ、こんな風に心臓の音が聞こえるくらいドキドキとするのは、初めてだ。



「前園光は、俺のもう一つの人格なんだ」



真っ直ぐに私を見てそう言った彼。もう一つの人格?!どういうこと?彼は二重人格ということ?



「本当の藤本翔平は、藤野さんに近い。人付き合いが苦手で、他人と深く関わり合おうとはしない。いつも、仏頂面で話しかけられても無愛想。言い方もきつい」



「・・・じゃあ、今まで私が見てきたのは」



「前園光の部分かな。俺、基本的に翔平の部分はあまり人に見せないようにしてるから」



藤本くんの話が理解できない。前園光が彼の別人格?でも、メールは何?それに彼は、大切な人だって言っていた。


私が真剣に考えていると聞こえてきたむせるような笑い声。さっきまで真剣な顔をしていた彼が、お腹を抱えて笑ってる。


「藤本くん!もしかして、私のことからかったの?」


「ごめん、ごめん。でも、半分正解なんだよ。前園光は俺のもう一つの人格っていうのが」


「さっぱり分からない。真剣な話をするのかと思ったのに、からかうなんてひどい!」
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