潮風の香りに、君を思い出せ。

「そうなんだ。私さっき余計なことした?話したほうがいいかなと思ってたんだけど」

「いえ、でも聞きたかったから。元に戻りたいんじゃないかって。聞いても仕方ないですけど、思ってること伝えていいって言われたから」

「素直だなぁ」

あかりさんは満面の笑みで言ってくれる。いいえ、全然素直じゃないんです、と心の中で否定する。大地さんとあかりさん、二人のおかげで昨日からいつもより少し素直に振る舞えてるんだと実感する。この際、素直に相談してみようかな。

「でも、聞けなかったこともあったんです」

あかりさんは、先を促すように笑顔でうなずいた。

「私、ナナさんの代わりなんじゃないですかって。顔はわかんないけど、似てる感じなのかなって」

「聞けなかった?」

「聞いても大地さんは自覚なさそうだし」

つい口を尖らせると、あかりさんは「確かに」と言っておかしそうに笑う。それから内緒の話を教えるように、ちょっと乗り出して顔を近づけてきた。あ、やっぱりこの人も近い。

「似てないって言ってたよ。私も似てるかなって思って、昨日の夜大地に聞いたの。しっかりしてそうだけど脆いタイプが好きなんだねって。ナナがそうなのね」

しっかりしてそうで脆い。自分がそう見えると言われて驚く。昨日車でキレてたことでそう思われたということだ。

「逆だって言ってた。七海ちゃんはおとなしそうだけど強いって。言われてみればそうだなって私も思う。あいつよく見てるんじゃないの、七海ちゃんのこと」

「強い、かなあ」

気が強いってことかも。昨日ズケズケと色々言った気がする。そういえば、大地さんは私のどこを気に入ってくれたんだろう。かわいげなかった気がするけど、いろいろと。

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