猫の湯~きみと離れていなければ~
適当にママの好きそうな本を選んで書店から出ると、近くのベンチで陽向はスマホを触りながら待ってくれていた。
わたしから言い放っておきながら、陽向は怒っていて口を聞いてくれないんじゃないかと思ってしまい近づきにくい。
「…ごめん、待たせちゃったね」
恐る恐る、でも明るく声をかけてみた。
「ちょい待ってー。今手がはなせないっ! 」
よかった、怒ってなさそう。
もしくは本当に伝わっていないのか。
それでもわたしはホッとしながら陽向のスマホを覗いた。
最近流行っているゲームの画面。
「ゆっくりでいいよ」
「…よっしゃ、ハイスコアーーっ!」
ゲームに熱中している姿は子供のときとなんにも変わっていない。
その純粋さが、莉子とわたしを悩ませているって気づくことはないんだろうな。