猫の湯~きみと離れていなければ~
書店に入ると、陽向から隠れるように本棚の陰で息をととのえた。
“誤解”なんて言葉が必要ないぐらい幼いときの純粋な“おともだち”のままでいるんだね。
こんな気持ちを持っているわたしは汚れている。
そんな気さえしてきた。
気持ちを落ち着かせなきゃ。
今、陽向と顔を合わせればきっと切なすぎて泣いてしまう。
気を紛らすように店内を歩くわたしの前に、ポーズをとっている莉子の広告ポスターが現れた。
その可愛い笑顔に、温かかった陽向の手の感覚が、どんどん罪悪感にかわっていく。
今なら莉子があんな態度をとった気持ちが分かる気がする。
陽向は誰にでもやさしいから、彼女の莉子は不安で仕方ないのかもしれない。