派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 



 インターフォンで確認し、渚は鍵を開けた。

「あれっ?
 今日も来てるの? 社長」
と小さな紫の風呂敷包みを手に未来が笑う。

「来ちゃ悪いか。
 日曜だしな」
と言うと、平日も居るじゃん、と未来は言った。

「……ねえ、蓮と子供とか作っちゃ駄目だよ」

 そう未来は笑ったまま言う。

「なんでだ?」

「そこでなんでだって言う人、初めて聞いたけど。
 あとで、貴方自身が困ったことになるからだよ、稗田(ひだ)社長」

 そう警告するように、未来は言ってくる。

「貴方には貴方の事情があるんだろうけどね」
と言う未来に、ノブを握ったまま、

「……俺の事情ってなんだ?」
と問うと、呆れた顔で、

「あんた、子供がいるんでしょうが、急いで」
と言ってくる。

「そうか。
 忘れてたな」

 そう呟くと、
「その台詞、蓮に聞かせてやった方がいいよ。
 たぶん、まだ、自分は子作りの道具にされてるだけだと思ってるから、あのヒト」

 世間知らずの癖に、変に警戒心が強いとこがあってさ、と未来は言う。

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