グリーン・デイ





 目を開けていても周りは真っ暗で、どうせなら目を閉じてしまったほうが死ぬという実感が沸いてくる。



 目を閉じた。確認のためにもう一度目を開けてみる。しかし、結局真っ暗のままだ。もう一度目を閉じた。やはりさっきと変わらない。もういい。このまま目を閉じていよう。



 その時、閉じた目が一瞬、パッと光が差した。瞼の隙間からほんの一瞬、光が確かに差し込んだ。目をゆっくりと開けてみた。何かがいる。その何かがこっちに向かって猛スピードでやってくる。



 魚か? 死神なのか? わからない。やがてその何かは僕の手を掴んだ。沈んでいた身体はどんどんと水面に向かって浮上していく。このまま天国に行くのだろうか。どんどん浮上していく。



 水面を抜けた。景色が歪んで見えたが、確かに水面に出た。



「ほら、大丈夫やけん! しっかりして!」



 誰かが僕を岸まで運んで、草の上に寝かせてくれた。水のぽたぽたと垂れる音と、ぜーぜーと物凄い息遣いが聞こえる。



「ほら、しっかり! 死んだらいかんよ! ねえ、お願い! 死なんといて!」



 視界に一人の少女が入ってきた。僕と同じくらいの歳の、ショートカットの女の子だった。僕に何かを語り掛けてくる。叫ぶように、必死に口を大きく動かしている。



 そして、その口は僕の口へと近づいてくる。やわらかい、優しい、そして、しょっぱい。



 この感触とこの味に覚えがあった。どこかで____どこだろう。わからない。



 思い出せない。



 僕は大量の水を吐いた。気管にも入っていたのか、むせた。息ができる。でも、まだしゃべれない。



 少女が僕の身体を強く抱きしめた。



「大丈夫。もう大丈夫やけん。あなたには私がおるけん。私があなたを守ってあげるけん。」




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