心に届く歌
☆シエルside☆
「はぁっ……けほけほっ」
保健室で眠っていたものの、5分足らずで起きてしまった僕は、ベッドの上で横になりながら咳き込んでいた。
隣の彼はまだ眠っている。
保健室の先生はいない。
いるのは僕と彼だけ。
にしても……
「けほけほっ……こほっ」
なかなか咳き込むのが止まらない。
緊張で眠れなかったのが影響しているのかな。
あったかい生活に触れて、体もなまっているのかな。
「あっ!いた!!」
ノックもなしに保健室に人が入ってくる。
カーテンで遮られ顔は見えないけど、入ってきたのは担任だとわかる。
50代前後の独身男性だと、体育館に彼に案内された時説明された。
「セレーネ!それにクザンまで!!
お前らは一体何をしている!
セレーネは転入初日だろう!!」
カーテンを開けた担任はいきなり怒鳴ってくる。
無意識のうちにガタガタ体が震えるけど、担任は気にせず手に持っていた本の山をドサリと床に置いた。
「これ渡すはずだった教科書!
いきなりサボるとは良い度胸しているなァ!!」
「ごっ…ごめんなさい…ごめんなさっ、ごめんなさいっ……」
「明日から楽しみだなァ!!」
担任はドスドスと足音を響かせ保健室を出て行く。
『何だこの額は!!
昨日より安いじゃねぇか!!
ちゃんと稼いで来いって言っただろォ!!』
『今日あんたは夕食抜き!!
明日もね!!』
『食べたかったらその分稼いで来い!!この役立たず!!』
ぎゅっと耳を強く強く塞ぐ。
怖くて仕方なかった。