心に届く歌








「お母様は、リュンヌ王国の次期国王であった息子…生きていると思ってる?」

「……どうかしらね。
戦争で亡くなったものだと思っているわ。

勿論、生きていてほしいけどね」



お母様は無邪気に笑った。



「だってもし王子様が生きていたら、それこそエルちゃんの婚約者だもの」

「は!?」

「エテと約束していたの。
もし子どもが生まれて男女だったら、結婚させようって」

「……そう、だったんだ…」

「どこにいるのかしらね……生きていてほしいわ」



リュンヌ王国の王子様……。

どんな人だったんだろう。

生きていれば、どんな風になっているのだろう。




「……あの、イヴェール様」

「どうしたのシエルくん」

「……リュンヌ王国のその、王子様のお名前は…何ですか?」

「名前を付ける前に亡くなったと聞いているから、名前はないはずよ」

「……そうですか」




シエルは頷いて、教科書を持ち上げぺらぺらめくっていた。





< 439 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop