心に届く歌
☆アンスside☆
耳元に聞こえる寝息。
背中に乗せ歩き出して数分だったので、やっぱり疲れていたんだな。
「ったく……無理しやがって」
だけど、前に比べると好意に甘えるようにはなってきていると思う。
今回も断られるかな?と思い背中に乗るよう言うと、素直に抵抗もせず乗ってきた。
俺はシエルに手を出さないと理解してもらっている証拠なのかもしれない。
「にしてもプーセが現れるとはな……」
嫌な予感しかしねぇけど……大丈夫であってほしい。
「おやクザン様。シエルさん連れてきてくれたのですか?」
「はい。エルちゃんいますか?」
「お嬢様ならお部屋にいると思いますよ」
すっかり仲良くなった門番さんと笑顔の交換をして、敷地内に入りお屋敷の中に入る。
通りすがりにメイドさんや執事さんとも挨拶をして、エルちゃんの部屋に入った。
「よーっエルちゃん」
「アンス!?
やだ、ノックぐらいしなさいよ」
エルちゃんは動かしていた手を止め、俺を見て目を見開いた。
しかしそんな驚き顔からすぐに眉を寄せ心配そうな顔に変わる。
本当、喜怒哀楽が激しい子だな。
「シエルどうしたの?」
「テストで疲れたみたいだ。…あとちょっとトラブルがあってな」
「トラブル…?
まさかクラスメイトに嫌がらせを…?」
「いや違う。
ひとまずシエルを寝かせても良いか」
「ベッドに寝かせてあげてちょうだい」
シエルをベッドに寝かせた俺は、エルちゃんと向かい合ってソファーに座り、
校門でプーセと会い話したことを言った。