心に届く歌
☆エルside☆
「貧乏人は大人しく村に帰っていろよ。鬱陶しい」
アンスの背中で震えるシエルに聞こえるよう、声を大きくするプーセ。
わたしはアンスの隣に立ち、プーセを睨んだ。
「シエルをそれ以上傷つけないで。手を出したらわたしが絶対に許さない」
「次期国王であるお前が言うなんてなぁ」
「もう帰って」
プーセはニヤリと笑い、一瞬でわたしとの間を埋めた。
プーセの嫌味なほど整った顔立ちが目の前に広がる。
「帰ってほしかったら、さっさとヤろうぜ」
「は?」
「跡継ぎ作れば良いんだろ。
さっさと作れば俺が貧乏人に関わることもなくなるぜ」
プーセの右手がわたしの腰に回り、サッと抱きしめられる。
扱いに慣れているのは、女遊びをした結果?
「やだっ…離して!」
「アンス、貧乏人と一緒に出ていけ。それとも見たいか?」
あの日、初めて出会った日と同じように、プーセは緩く巻かれたネクタイをほどく。
「離して!」
「離すもんか。離してほしかったらさっさとヤるぞ」
「おいやめろプーセ!
嫌がってんだろエルちゃん!」
「うるせぇよ。お前に関係ないだろ」
アンスを無視し、わたしの腰を抱いた手とは逆の左手を使い、
プチンとワイシャツのボタンを外していく。
わたし、このまま襲われるの?
「……エル様から離れてっ!!」
ドンッと、プーセの体がシエルに押されて傾く。
プーセの手が腰から離れ、シエルがわたしの前に立った。
「エル様に手を出したら、僕が許さないっ!」
震えた声で、でも力強くシエルはプーセに向かって叫んだ。