心に届く歌






「シエルは自分のことを話さないから、詳しくは聞いていないわ。

けどあの雨の日、シエルがティラン伯爵のお屋敷の周りの道の真ん中に倒れていたのは事実よ。
しかも頭から血を流した状態でね」


「……」


「他にもドクが診てくれたんだけど、手足も傷だらけで熱も高くて、かなり衰弱している状態だったの。
放っておけないでしょ?シエルのこと」


「……いつから名前で呼ぶ仲になったのだ、エルは」


「あら。友達を名前で呼ぶのは当然よ」




わたしの友達発言に、驚いた様子のお父様とお母様。




「友達……?
エル、あなたプーセくんはどうしたのよ」


「プーセさんはあくまで許嫁でしょう?
シエルは友達…関係が全くの別物よお母様」


「でも…許嫁以外の男の子をお部屋に呼び込むなんて。
国民が知ったらどんな反応をするか……」




心配顔のお母様と、腕を組み考えるお父様。




国民が知ったら?

知ったらきっとますます反発心を高めるはず。

許嫁以外の男を連れ込んだ女として。

でも、シエルを見捨てることなど出来ない。





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