地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜



それに今日は営業もアシスタントも休みが何人か居るから、他の営業の人に、急ぎの入力を頼まれたりしてお昼になるのが早かった。


お昼になり、今日は人数が少ないから自分の机で弁当を食べる事にした。


鞄から弁当箱を取り出して机の上に置いた時、笹山くんが外回りから戻ってきたみたいでオフィスに入って来た。


『お疲れ様です』と言って中に入って来た笹山くんに、オフィスに居る人が『お疲れ様です』と声を揃えて言った。


笹山くんは自分の机に座るなり、私の方をチラリと見た。


そして彼は私に無言で袋を差し出した。


「何これ?」


「それあげるんで、この弁当と交換してくださいね」


そう言った彼は、私が食べようとした弁当を奪うと一口食べた。


周りに人が居る事もあり、大声も出すことができず、もう一口食べてしまった弁当を返してとも言えずに、彼から貰った袋の中身を取り出した。


見ると中身はまだ暖かいカツサンドだった。
急に奪われた弁当だったけど、カツサンドがあまりにも美味しそうで、それを一口食べた。


「美味しい……」


「それは良かった。玲美さんの作った弁当も美味しいですよ。それにーーー」


『そのカツサンド、玲美の喜ぶ顔が見たくて並んだんだ。それに玲美の作った弁当、食べてみたかったから』と誰にも聞こえないように耳元で囁かれた。


急に耳元で囁かれた事により、私の心臓がバクバクしだした。


それに私の喜ぶ顔がとか、弁当を食べてみたかったとか言われたら、正直嬉しかったりする。


私は何だか照れくさくて、何も言わないままカツサンドを無言で食べた。




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