地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
笹山くんは私の作った弁当を綺麗に食べてくれたけど、足りないのを想定していたのか、カップラーメンを袋から取り出してお湯を入れて、更にはおにぎりを一つ食べていた。
若いし、男の人だけあってよく食べる。
午後からの仕事も終わり、とうとう終業時間になってしまった。
皆は帰る支度をしていて、笹山くんからは何もあれから言われてないか私も帰る支度をしようとした時に笹山くんから声を掛けられた。
「玲美さん、悪いんですけどこのリストのお菓子の画像を全部印刷頼んでいいですか?月曜日に必要なので」
「今から?」
「たったさっき得意先から電話でファックスを送ったから、そのリストの商品画像を印刷してきて欲しいって言われて、朝一に持って来てと言われたんですよ」
「わかった」
得意先に頼まれたなら仕方ないもんね。
私はパソコンで画像を貼り付けて、商品名や規格も打ち込んでいった。
その間に他の営業やアシスタントの人は帰り、笹山くんは一階に降りていた。
営業は休み関係なしに得意先から電話もかかるみたいで、日曜日でも会社に行って仕事をしたり、得意先に行ったりするみたいだ。
しかし商品多いな……。
ちょうど最後の商品画像の印刷が終わった時、笹山くんがオフィスに戻って来た。
「ちょうど印刷が全部終わったよ」
「サンキュ、ありがとな玲美。もう全員帰ったし、今は俺達二人きりだからキスでもしとく?」
椅子に座っている私を後から抱きしめて、耳元でそう言った。
急にそんな事をされて耳元で言われたら、心臓がドキドキしてしまう。
「今日は残業はしないって言ってたじゃない。だからキスなんてしない」
「残業はしないよ。だけど俺に付き合ってもらう約束したから、車で玲美の家まで後ろから付いていくから、車を家に置いたら一度着替えたら、俺の車で出掛けるから」
「出掛けるって何処に行くの……?」
ま、まさかホテルに連れ込まれたりしないよね!?
「何か変な想像してるみたいだけど、行きたいなら行こうかホテルに?」
ニヤリと笑って彼が言った。
「い、行きません!兎に角、帰るわよ」
私はパソコンの電源をおとして、戸締まりの確認をした。
一緒に会社を出て駐車場まで歩いて行き、私が車を走らせると、笹山くんも私の車の後をついてきた。