あなたにspark joy
結構です、こんな人。

時間にルーズ、場違いな服装の男とはなにも始まらない。

「ちょっと、外の空気でも吸ってきますぅ」

右隣の瞳にボソリと呟き、そのまま左側のドアから外に消えた私に、はたして有賀さんは気付いただろうか。

いや、気づくまい。

彼も佐田君共々、漸く到着した篠宮慶太に私が気を良くしたと勘違いし、心置きなく意中の女子と楽しく飲めると安心していることだろう。

店の中は洋風居酒屋らしく、ほどよい賑わいを見せている。

私は化粧室を出た後、スマホを取り出した。

『飲み会どう?イイ男、いた?』

会社の同僚で、総務課の南ちゃんからLINEがきていた。

だめ。

無駄な時間を過ごした憤りを、文字じゃなくて肉声で伝えたい。

「もしもし、最低」

私は広い通路に置かれた観葉植物と向かい合うと、南ちゃんに悲劇を伝えた。

まだまだ言い足りなかったが、このまま喋り続けることもできず、私が部屋に戻ると、みな相変わらず盛り上がっていた。
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