勘違いという恋の駆け引き



『二人とも大丈夫?』


「…まぁ、なんとか。二日酔いじゃないけど、寝不足なだけ」

「…同じく、」

運転中の優と
後部座席でグッタリしている絢斗に
ブラックの缶コーヒーを渡した


「…まあ、よかったんじゃねーの?」


『うん、ありがとうね絢斗』


「本当だ、相変わらず親父さん酒強えし、日帰りできるかもって一瞬でも思っちまった事を後悔するわ」


ごめんって、
絢斗がいてくれて、助かったのは事実だ
何かお礼と思ったけど、全く思いつかず
お昼でも奢ろうか?と言えば
女に奢ってもらうなんて糞だ、と言い出す


「なら、俺が奢ってやるよ。ついでに不動産屋にもついて来いよ、あそこの社長、友達だろ?」


許しが出たから直ぐにでも
一緒に暮らしたいという優
絢斗は面倒くさそうにしていたけど
仕方ないな、と笑ってくれた



「今日、契約するから」


『今日!?』


驚いたけど、
私も早く優と一緒に暮らしたい
赤信号で止まった車
チラッと後部座席を見れば
絢斗は目を瞑って眠っている


だから、静かに
私たちは唇を重ねた



【完】

< 128 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop