また、部屋に誰かがいた
「木下!いたら返事しろ!どこだ!」
僕たちは彼を呼びながら廊下を歩いていると、また

ガサガサ…
ガサガサ…

そんな音が暗闇の先から聞こえてくる。

いつの間にか僕の手は汗で濡れ、手のひらが爪で痛くなるほど強く固く拳を握りしめていた。

う…う…う…

廊下に漏れている不気味な声は、いくつか並んでいた扉のひとつから聞こえているようだ。

何かいる!

この扉の向こう。この部屋に…


扉のドアノブに手をかけた僕は、大きく息を吐いてから思い切って、それを回し扉を開けた。
そして、懐中電灯で照らしながら、その部屋の中を覗くと…

暗い廃墟の一室の片隅で、尻を丸出しにした木下が背中を向け、しゃがみこんでいた。

部屋には鈍い音と異臭が漂う。限界に達した彼は最後の手段に出ていたのだった。











「部屋に誰かがいた」






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