一寸の喪女にも五分の愛嬌を
(……まだ付き合っているんだ。もう二年もなるのにね……)
声を失いただ呆然しながら、現実逃避なのかそんなことを考えていた。
「こんばんは。俺は職場の後輩なんです。仕事ことでの話をしていたんですよ」
私が何も言わないから、成瀬が当たり障りなく軽く説明をしてくれた。
突然成瀬に話しかけられ、綾乃は少し驚いたような表情を見せてから、すぐに微笑んだ。
「そうなんですか。急に声をかけてごめんなさい」
それから私へと向き直ると、また困ったような笑みを浮かべ、申し訳なさそうに言った。
「薫、また連絡するね」
彼女の声は、とても小さかった。
私の反応も返事も待たずに、彼女は彼の腕を引いて歩き始める。
足を止めたまま固まっている彼、宗一郎を綾乃は無理矢理引っ張って歩く。
横顔に、宗一郎の視線を感じながら、私はその場に凍り付いたままじっと立ち尽くしていた。
「……先輩?」
遠慮がちな成瀬の声に、何か反応しなければと思うのに、私は何も返せない。
目の前が暗い。灯りはどこに行ってしまったのか。
耳の中が幕を張ったように音がぼやける。
そして成瀬を見ることもできないでいた。