一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 私は今、どう見えているだろう。

 成瀬に変に思われていないだろうか。

 そう考えるのに身動きができず、息さえ満足にできない。

 ガッと手首をつかまれた。

 驚いて顔を上げると、成瀬がどこか怒ったような厳しい表情をしていた。

(成瀬……怒ってる)

 私の態度が悪いから、怒らせてしまったのだろう。

 申し訳ないと思うのに、まだ体が自由を失ったままで、何一つ反応ができない。

 しばらく私を見下ろすように見つめていた成瀬が、グイッと私を引き寄せ、肩に腕を回した。

「帰りましょう」

 今まで聞いたことのない成瀬のキツい言い方に、思わず嘆息する。


 ああ、成瀬の機嫌を損ねてしまった。

 せっかく楽しい時間を過ごせていたのに……。


 神様は意地悪だ。


 楽しい時間の後に、こんな残酷な偶然を用意しているなんて。

 それとも、私がつけあがっていたから、罰を与えたのだろうか。

 成瀬は通りに出るとタクシーを止め、すぐに私のマンションの場所を告げた。
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