一寸の喪女にも五分の愛嬌を
私は考える。
もしかして、成瀬は気がついたの?
さっきの人が、前の彼氏で……まだ完全に吹っ切れていないことに……。
そうかもしれない。
成瀬はとても周囲に気を配る人だ。
それは相手の挙動をよく見ているからに他ならない。
はあ、と大きく吐息をこぼした私は、力を抜いて成瀬の肩に自ら頭の重みを預け、それから笑った。
「ははは、成瀬は気がついたんだ。さっき相手が前の彼氏だって」
「……先輩が辛そうに彼から目を逸らし、あの人が先輩を複雑な瞳で見ていたから……きっとそうなのかなって……」
やっぱり気がついていたんだね、と呟けば、成瀬は私の背中に回している手で、そっと髪を撫で下ろしてくれた。
「先輩……あの人がまだ好きなんだ」
「いいえ、もう好きじゃない」
「ウソだ」
「ウソじゃないよ」
成瀬の肩から顔を起こした私は、見下ろしてくる彼の目を真っ直ぐに見つめた。
どこか不安そうに揺れている綺麗な瞳でこちらを見下ろしている成瀬の頬に、思わず私は両手を差し出す。
そっと彼の頬を包み込み、私は静かに告げる。
「今はもっと好きな人がいる。あの人とは辛い別れ方をしたから、まだ心が少し痛むだけなの。今はもう……私の心は違う人のものなの」
成瀬の目が大きく開かれ、それからゆっくりと細められた。