一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「……好きな……人?」

 そろりと問われて私は口元に笑みを浮かべる。成瀬を見つめながら、唇を開く。

「そう……成瀬ももうわかってるよね」

 瞬きを一つして、私は告げた。


「戦国武将の片倉小十郎様とセレブのアンドリューとリタニア王国のリゼル王子よ」


 一瞬ポカンとしてから、成瀬は思い切り吹き出した。


「あははは、ははは! ちょっ……! せんぱっ……はははは!」

「あんた笑いすぎでしょ!」

「いや、あはっはは、これ、笑う! あはははは!」

 目の端に涙まで浮かべている。

 お腹を押さえて笑いながら、成瀬は苦しそうに言う。

「ちょっ……、俺、今の流れから……俺の名前出るかもって……めっちゃ期待して……それを、ちょ……片倉小十郎とか……あははは! ない、ないでしょ、それ」

 だよね、と私もにんまりと笑う。

 きっとそう言われると成瀬が思っていることを十二分にわかっていながら、わざとゲームの中の二次元たちの名前を挙げたのだ。

「バカね、うぬぼれるんじゃないわよ」

 こんなムードに流されるほど、残念ながら私はウブではない。

 成瀬のことは嫌いじゃない、いや、正直に言えば……好きかもしれない。
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