一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 けれどそれは会社の後輩として。

 決して恋人としての好きではない。

(はずだよね)

 心の中で一度確認してから、私は腕組みをして成瀬にきっぱりと告げた。

「泊まるのはいいけれど、私はムードに流されたりしないから。だからいつも通り、触るのは禁止」

 さ、飲み直そうか、と声をかけて、ようやく靴を脱いだ。

 可愛げのない喪女だね。

 自分で悪態を吐きながら、それでいいのと納得して成瀬を招き入れた。


 少し飲み足りないと思っていたけれど、今になってしまえばもっと飲みたい気分になっていた。

「ワインとビールどっち?」

 まるで自分の部屋のようにジャケットを脱ぐ成瀬に問いかけると、成瀬は「先輩と同じので」と言ってから、すぐに「やっぱワインで」と言い直した。

 ワインとグラスを運び出すと、ベッドに腰掛けていた成瀬が上目遣いで笑う。

「先輩、隣に座ってもいい?」

 不思議なほど先ほどまでの重たい気持ちが消えている。

 ついさっきまでは、別れた時の痛みやぽっかりと空白になってしまっていた寂しさに押しつぶされそうになっていたのに、成瀬のおねだりするような笑みが、それらを流し去ってくれたようだ。

「ん……、ま、いいわ。どうぞ」

 仕方ないなあ、なんて素振りで腰を下ろし、隣をトントンと叩くと、途端に成瀬は嬉しそうに私の隣に腰を下ろした。
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