一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 軽くグラスを合わせて飲み始める。

 おつまみにチーズを出したら、成瀬から「今日はおやじ嗜好じゃない」と笑われたり、「ならあんたが今度は買ってきなさいよ」と言い返したりしている内に、すぐにワインは空になってしまった。


 また雨が降り出したようだ。窓の外で、雨の音がしている。


 ワインの買い置きがなくなったので、今度は缶ビールを持ち出し成瀬に渡す。

「また雨だね。お店を出るタイミングよかったね」

 窓の方を見遣りながら、何気なくそう言った瞬間、成瀬は私の肩に頭をもたせかけた。

「な、成瀬?」

 成瀬の重みが肩からリアルに伝わり、私は少し慌てる。

「どうしたの? 酔った?」

 そういえばあまりお酒は強い方ではなかったことを思い出し、「気分悪い?」と焦りながら問いかけると、成瀬は肩の上で首を振った。

「先輩……本当にタイミング良かったって、思ってんの?」

「……?」

 何を言いたいのかよくわからず、首を傾げる。

 だってあと少し遅く帰っていたら、雨に遭っていたのだから、良かったじゃないか。
 そう言おうとしたけれど、すぐに成瀬が言葉を継いだ。

「前の彼氏に会えて良かったって思ってるんだ」

「…………はあああ!?」

 成瀬の発言が斜め上過ぎて盛大に叫んでしまった。
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