一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 あれほど落ち込み、死ぬほど悩み、そして外に向ける心を閉ざしたことは、私にとって大げさに言えば生死を彷徨うほどの大事件だったのに、人から見たら些細なことでさえないのだろう。

「まあ、そうなんだけどね……ただ今日は俺、柴崎さんに謝りたかったんだ。それで本当にならお詫びに食事でも誘いたかったんだけどね」

「お詫び? 早川さんが私に謝っていただくことってなんでしょう?」

 不思議に思い首を傾げると、早川さんは立ち上がり私のそばに歩み寄る。

「光元さんともめた時、俺が余計なことを言ったから彼女の心証を悪くしたんだろうなって……。彼女を追い詰めたからだよな」

「そんなことありません。あの時は助け船を出していただいて嬉しかったです。私の光元さんへの言い方が悪かったんです。早川さんが気になさることはありません」

 そんなことを気にしてくれていたのかと、私は早川さんの言葉に驚く。

 彼は人事課にいる時から周囲に気を配れる人だったことを思い出す。

 性格も明るくてそれでいて責任感もあり、頼れる先輩だった。

 自然と頼りたくなる雰囲気があったが、それは今でも変わっていない。

 早川さんは頭を下げながら、少しだけ言いにくそうに続けた。
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