一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「待っていただいても気持ちに変わりはないですと、そうお伝えしているんです」

 ようやく言いたいことが言えてホッとした私とは反対に、早川さんはグッと表情を険しくして、少し不機嫌そうに低い声を出した。

「ちょっと小耳に挟んだんだけど、新しく人事課に配属された成瀬って奴との噂、まさか本当じゃないよね?」


 ドクン、と強く胸を叩かれた。

 いや、心臓が強く跳ねたのだ。


 一瞬にして頭の中が真っ白になり、顔から血の気が引いたのがはっきりとわかる。


 ――成瀬との噂?


(一体……どんな……)

 聞くのが怖い。

 いい話ではないことぐらい、聞かなくてもわかるから、これ以上何も聞きたくない。

 胸がつかえて苦しい息を吐き出すことも、新しい息を吸うこともできず、今にも酸欠で倒れそうになる。


(ダメだ、絶対にダメだ。それだけはダメだ)

 成瀬と私の繋がりなんて気づかれてはダメだ。

 先輩としての贔屓ではなく、確実に成瀬はこの先も有望な人材で将来を嘱望されるべき人間だ。

 この会社にとって損か益かで考えれば、確実に私よりも成瀬に利がある。

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