一寸の喪女にも五分の愛嬌を
(今の私の状況に、成瀬を巻き込むわけにはいかない)

 しっかりしろ、自分! と叱咤し、私は大きく息を吸い込み自分を落ち着かせる。

 それからフッと軽く笑って、早川さんを真っ直ぐに見つめた。

「早川さん、私と成瀬にどんな噂があるのかなんて、私は興味もないので全く知りません。もし何か噂があるとすれば、全てガセネタです。成瀬君の指導を担当したのは確かに私ですが、それ以上もそれ以下も何もありませんから」

 ハッキリとお腹の底から声を押し出しながら告げた。

「彼と噂されること自体、私にとって迷惑です。それだけは明言させてください」

 あまりにも強い言い方をしてしまったから、早川さんは面食らったのかしばらく沈黙を落とす。

 私の中で感情が凍り付いていく。

 成瀬に対して浮ついた気持ちを少しでも持っていたことが恥ずかしい。


 ――喪女なんかが浮かれて、バカじゃないの


 また耳の中に罵倒する声が聞こえた。

 それは間違いなく自分の声だ。


 これ以上、もう何も話したくない。

(早く帰ろう。……帰ってめちゃくちゃ課金してゲームに没頭しよう)

「早川さん」

 呼びかけると早川さんはパチリと瞬きをし、私を見下ろしてくる。

 その表情はどこか放心したように見えた。
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