一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「君が一人で苦境に立っているのが堪らなく不安で、それなのに誰の手も借りようとしない強がる君の、本心の心細さが伝わってきて、俺は……どうしても守りたくなったんだ。か弱い女性を守りたくなる俺の気持ち……わかって欲しい」

 動かない頭の中、じわじわと彼の言葉を咀嚼する。

 そしてようやく理解した途端に、私は目の前の早川さんの胸を突き飛ばし叫んでいた。

「守りたいからってキスするとか、アホですか!? 勝手に自分の妄想世界に酔って、私が心細いとか、はっ! ばっかじゃないですか? 俺の気持ち? わかるわけないでしょう? そういう押しつけはお断りですから!」

 いきなりまくし立てだした私に圧倒されてしまったのか、早川さんは目を見開いたまま硬直している。

 私は急いで扉に手をかけ、「断固お断りいたします!」と投げ捨てるように告げて部屋を飛び出した。

 幸い、廊下には誰もいなかった。


 心の中がぐちゃぐちゃだ。


 怒りなのか情けなさなのか、自己嫌悪なのか、胸の奥からわき上がる感情を整理できなくて、私は会社を飛び出した。

 勝手に涙があふれそうになるけれど、誰にもこんな姿は見せたくなくて足早に会社から遠ざかる。

(誰にも見られないところに)

 そう思うのに、どこにも行き場がないことに気がつく。

 ビジネス街の帰社時間。道には人があふれている。
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