一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 目の前にある成瀬の表情は、いつになく引き締まり真剣そのもの。
 
 笑っていないと、どこか大人びた雰囲気がやけに色香を醸し出す。

 間近で見ていられずに、瞼を伏せかけた途端に手を掴まれた。

「やっぱり……俺のこと、避けてますよね?」

「……え?」

 成瀬の言った言葉が理解できずに、顔を上げてマジマジと成瀬を見つめる。

「だって先輩がこんな変な噂立てられているの、俺のせいでしょう? だから俺のこと怒って避けてるんじゃないんですか?」

 なぜこいつは自分のせいだと思い込んでいるのだ?

 それともなにか?

 カッコイイ俺様が目をつけた女は、他の女から嫉妬されていじめられるんだよとか、そんな思い上がったことでも考えているのか?

 呆れて私は思わず苦笑を漏らす。

「あのさ、成瀬誤解してる。この発端は総務の女の子と私の間で始まったことだと思うの。まあ、それしか原因がないからさ。なんで成瀬のせいになるのよ。思い上がってんじゃないよ、馬鹿たれ」

 笑った私に、成瀬はふるふると顔を横に振った。

「違うんです。先輩……。俺、直接言われたんですよ」

 それから成瀬は私の手を握りしめたまま、自分が言われたことを教えてくれた。
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