一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 成瀬に言われて心の中で呟きがこぼれる。

(強い……か。そうだね、自分でも強いと思ってきた。でもね……)

 今日、思い知った。

 菅井さんと稲田さんが味方になってくれて、私のために憤ってくれた途端に、私はまざまざと思い知ったのだ。

 本当は心が痛んでいることも、一人では苦しいことも。

(きっと薄っぺらいブリキの仮面で心を覆っているだけだ。けれど今は脆い自分を見たくない。それを見てしまったら、きっと二年前からずっと積み上げてきた自分が全て崩れ落ちてしまいそうだ)


 今は同情されたくない。慰めても欲しくない。

 成瀬の心遣いはありがたいけれど、それを受け取るわけにはいかない。

 だからいつもより数割増して自信に満ちた不適な笑みを浮かべた。

 それから胸を反らせ、堂々とした態度を取る。

「発端は成瀬のせいかもしれないけど、嬉々としてこんなつまんないことをやっているのは女子社員なんだから、成瀬に責任はない。だから謝る必要もない」

「先輩……」

「というわけで、今は同僚としてただビールを酌み交わせばいいよ。あ、おつまみ……チーズ鱈があったかも」

 おつまみを取りに行こうと立ち上がりかけた私の手を成瀬はいきなり強く引いたから、バランスを崩して成瀬の胸に倒れ込んでしまった。

< 68 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop