一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 それに今、私が悩んでいるのは不名誉な噂を流す彼女たちではなく、斜め向こうのデスクに座る成瀬のせいなのだ。

 申し訳なさ過ぎて恐縮してしまう。

「ご心配ありがとうございます。そう言っていただけるだけで心強いですし、私も自分が言われるのは全然平気です。社会人として恥ずかしくない態度で対応したいと思っています」

 ニコリと微笑みながら告げれば、稲田さんは感心したように頷く。

 どこか私に対して遠慮を持って接している彼女の表情が、一瞬だけ親しい人を見る目になった。

「やっぱり……柴崎さんは思った通り。私と似ていますね」

「似ている? いえいえ、私は稲田さんのように気が回るタイプではありません。全然足下にも及びませんよ」

 慌てて否定した私を、稲田さんは口元に手を当ててクスクスと遠慮がちに笑う。

「根本的な性質……実は外面がいいタイプですよね? 私も同じです」

「はっ……? あの……」

 戸惑う私に稲田さんは「またゆっくりとお話できる機会を設けませんか? 菅原さんも一緒に。それと、あんな女子社員には負けないでください。私は何があっても味方をしますから、落ち込まないでください」

 それだけ言い置いて、呆然としている私を残し、自分のデスクに戻っていった。
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