一寸の喪女にも五分の愛嬌を
(な……なに? 今の稲田さん?)
口数が少なくて、地味でおとなしく、例えれば夫から三歩下がってついて行きます、みたいなタイプだと思っていた稲田さんが別人のように感じてしまった。
(似た、タイプ?)
外面がいいと言っていたけれど、稲田さんを見ている限り、外面ではなく根っからのおとなしさにしか見えない。
混乱してきた私は、自分の周りの空気を変えたくて化粧室に向かう。
残念ながら、そこには三人の女子社員が先に鏡の前を占拠していた。
そして私が入るなり、早速眉根を寄せてひそひそと何かを言い合って、ツンとわざとらしく顔を背けて出て行ってしまった。
はあ、と鏡に向かって愚痴の一つも言いたくなる。
「な~んでこんなにこじれるかなぁ」
最近の女の子は難しい、なんてちょっとお局的な思考になりながら、私は軽くストレッチで肩をほぐしてから化粧室を出て自動販売機のコーナーに寄る。
熱いコーヒーにしようとしたけれど、ふと甘い飲み物が欲しくなり、ホットココアを選び仕事に戻ろうとして振り返った私は息を飲む。
その場に、成瀬が壁に背を預けて立っていた。