一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 いつの間に後ろに来ていたのだろう。彼はこちらを見るでもなく、かといって販売機の商品を選んでいる風でもなく、ただそこに立っている。

「なっ――」

 何してんの、こんなところで!

 と素の言い方をしそうになって慌てて表情を取り繕い、軽く頭を下げる。

「成瀬君、お疲れ様です。私のせいでまだ慣れないのに仕事任されてしまったこと、申し訳ないと思っています。わからないところは何でも聞いてください。最大限のサポートをしますよ」

 声をかけると、成瀬はゆっくりと視線を私へ向け、しばらく黙って見つめてくる。

(なんだろう……)

 やけに成瀬の態度が重たいような気がして、私は成瀬をじっと見つめた。

 手の中に握りしめているホットココアがジワリと熱を伝え、いたたまれないような気にさせられる。

 やがてもたれていた壁からふわりと体を起こした成瀬は、私の横をすり抜けて自動販売機に小銭を投入した。

(って、無視か、おいぃぃ!)

 成瀬が仕事を頑張ってくれていることのねぎらいも、手伝いを申し出たのも全て無視して販売機に向かっている。

 百歩譲って好意的に考れば、一刻も早くコーヒーか何か、とにかく飲みたかったのに、私が邪魔でイライラしていたとも考えられる。
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