一寸の喪女にも五分の愛嬌を
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待ち合わせ場所は水族館の最寄り駅の改札口。
たくさんの人が吐き出されるのをなんとなく眺めながら、私は成瀬を待っていた。
先に会社を出た私のスマホには成瀬からのメールが届いている。
『ちょっとだけ待っててください。絶対に帰らないで待っててくださいね』
どこか必死な文面に、なんとなく笑えてしまったと同時に、返信があったことにホッとしていた。
こうやって誰かと待ち合わせをして、どこかへ出かける楽しさをずっと忘れていた。
人と出かけるなど億劫だと思っていた私の中のどこに、こんな感情があったのだろう。
表情には見せないけれど、ウキウキとかワクワクとか、年甲斐もなくそんな気分になっている。
(相手が成瀬っていうのが……ちょっと癪だけど)
この気持ちが、女慣れした男の手管に引っかかってるようでかなり癪だ。
待っている間にアプリを開き、セレブとのパーティーを進めようかとも考えたけれど、こうしてただ待っている時間が案外楽しいことに気がついた私は、スマホを鞄にしまい込み、ただ流れる人々を見遣っていた。
一旦、人の流れが途切れ、またすぐに人が改札口に向かってくる。電車が到着したのだろう。
そして、目的の相手の姿をすぐに認める。
(成瀬……)
人混みの中にいても目立つ姿。
私の目は彼に引き寄せられていた。