一寸の喪女にも五分の愛嬌を


「素敵な店ですね」

 向かいに座る成瀬が周囲を見回しながら小声で言う。

 レストランの中は、雑誌の写真で見ていたけれど、想像以上に素敵だった。

 大きな水槽が薄青い照明で照らし出され、悠々と泳ぐ魚も心なしか心地よさそうにしている。

 店内の照明は最小限に抑えられ、テーブルにロウソクが灯され、落ち着いた大人の空間になっている。

 点在する円柱の柱の中にも水槽が埋め込まれ、淡い照明の中、クラゲがふよふよと浮いたり沈んだりしている。

「なんだか魚を見ていると癒やされるわ」

 運ばれてきたワインの注がれたワイングラスを持ち上げながらそう言った私に、成瀬も大きく頷く。

「いい店ですよね。先輩、こういうところが好きなんですね」

 チンと高い音を響かせてワイングラスの縁を重ね乾杯する。

 触れ合ったグラスの縁になぜかドキリとして、赤ワインが小さく波立つと同時に私の心もさざめいた。

 けれどすぐにそれを押し込めて一口ワインを含んで、何気ない口調で告げる。

「うん、ずっと行きたいって思ってたんだけど、ほら、私はプライベートではあんまり人付き合いしないから、なかなか来る機会がなくて……勝手に決めてごめんね」

 男の人にしたら、こんな雰囲気はどうなのか。

 急に不安になってしまった。
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