一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 しかし成瀬はすぐに破顔した。

「まさか。俺、先輩からメールもらった時、めっちゃ嬉しかったんですよ」

「嬉しい? どうして?」

「先輩、一緒にご飯食べに行ってくれないんじゃないかって……俺、本当は自信なかったんですよ。だからまさかお店まで指定してくれるなんて、想像もしていなかっただけに、メールもらった瞬間、俺、その場で飛び上がりそうになりましたよ。もうそれからはソワソワしちゃって仕事になりませんでしたから」

「なにそれ」

 プッと吹き出してしまった。

 今日は一日淡々と仕事をこなしていたくせに、内心でそんなことを考えていたなんて、なんておバカで可愛いのだろう。

 そう考えてしまう自分に、少し前に感じていたほどの拒否感はない。


 ――もう認めてしまえ。


 心の中でもう一人の自分が促している。

 そこまで抗うことでもないでしょって、促してくる。

 促されて私は心のベールを一枚はがし、そうすることで素直に思えた。


(成瀬……可愛いね)


 これぐらいは心の中で思ったっていいじゃないと、かたくなに人を遮断し続けている自分に許しを出す。

 素直になってしまえば、今まで入っていた肩の力が抜けた。
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