一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「な~んだ、じゃあ誘いを断っても良かったんだ。あんな書き置きされたからって、律儀に守ってしまったじゃない」

 口元を引き上げてシニカルな笑みを浮かべてそう告げると、成瀬が慌てた様子で焦りを見せる。

「ちょ、せんぱっ……そんなぁ。誘ったの、迷惑だったんですか? あ、迷惑ですよね。先輩、ゲーム進めたいですもんね」

 シュンとしてうなだれた成瀬が叱られた子犬のようで可愛い。

 今はゲームより成瀬といる方が楽しいと思うのに、つい私はいつものツンとした口調で可愛げなく言ってしまう。

「当然でしょ。今や私はゲームの中で生きていると言っても過言ではないの」

 でも……と少し声を落として続ける。

「今、この時間は嫌いじゃない。やっぱり本物の食事は美味しいし、こうして成瀬としゃべるのも悪くない時間だと思ってる」

 社内ではチクチクとした針の上に立っている気分をしているだけに、成瀬とゆっくりワインを飲みながら美味しい食事をしている今の時間は、正直に言えば癒やされる時間だった。

 けれど私の言葉を聞いた成瀬は、額に手を当ててガクッと勢いよくうつむいてしまった。

「成瀬、どうしたの?」

 頭でも急に痛くなったのかと心配して成瀬の顔を覗くように首を傾けると、成瀬はうつむいたままサッと私を遮るように手を前に出した。
< 91 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop