アナタの過ち



それは、煙草を灰皿に押し付けたとほぼ同時だった。

「あの…ビンタして下さい…」

軽くため息をついて、思いっきり叩く。

人をこんな真正面から叩くの初めてかも。

心が痛んだ。
私は暴力を振るいたいわけじゃない。


『ねぇ。私の前では何してくれるの?』


「えっと…じゃあ、見ててください」

男は座席を目一杯後ろに下げて、服と下着を一緒に脱いだ。

『…』


「あの…上も脱いでいいですか?」

『好きにすれば?』

男はおもむろにアウターとロンTを脱いだ。

車内でほぼ全裸。

別に、面白くもない。
面白いわけがない。

「恥ずかしぃです…」

『何言ってんの?』

こんな事ばかり続けて。
私はいつか殺されるんじゃないかな。

「ゃめてくださぃ…」

『何を?こっちは見てあげてるんだけど』

「はぃ…すぃません…緊張して…」

『なにそれ』

疲れる。

「すぃません…」

こんな会話をしてても自慰を続ける。
滑稽な姿。

「あっ…出ます…っ」

『…早くして』

「はいっ…あっ…」

男は果てた。
私の隣、狭い車の中。

本当に滑稽な姿。

男も。

そして、私も。



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