モテ子☆モテ男の恋愛事情。


そう思ったのは彼女も同じだったようで。

櫻井が近づいてきたことで彼女の意識はもう俺にはなかった。


早くここから抜け出したい。

そんな思いが、俺の胸を押す彼女の腕から伝わってくる。


俺から解放された彼女は。

今度は俺の前で櫻井と話しだす。


話し出す、なんてものじゃなくて。

目の前の二人はじゃれ合ってるようにしか見えなくて。

彼女が抵抗するのも無視して抱きかかえるその姿に、周りは笑いながら見守ってるだけだった。


それが、あたかも普段どおりだというように。

それが当たり前だというように。


彼女の口から“隼人”と櫻井の名前がでるたびに。

ズキズキと痛む胸。


学校では見ることのない神崎ゆずの姿に。

ギュッと心臓が潰されそうになる。


「…仲がいいんだね」


真っ黒な何かに潰されそうになりながら。

その真っ黒なものにベッタリと笑顔を貼り付けた。


「櫻井と神崎さんがそんなに仲が良かったなんて知らなかった」


ここにも、ライバルがいたなんて知らなかった。


自分でも気持ち悪いと思うくらいの笑顔。


あぁ、なんだろうこの感情。


イラつく。

ざわつく。

ムカムカして。

すごく苦しい。


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