モテ子☆モテ男の恋愛事情。


「翔…?」


櫻井の怪訝そうな声で、ハッとして。

普段は滅多に見せることない戸惑った顔をした櫻井を見たことで。

その真っ黒なものに無理やり蓋をする。


「…どうした?」

「ん、何が?」


何が? なんて白々しい。

変に勘のいい櫻井が、俺のその変化に気がつかないわけないのに。


ハッと、小さく息を吐いて。

気持ちを落ち着かせる。


「翔、ありがとな」

「いや、彼女に当たらなくてよかったよ」


櫻井から逃げた彼女は、今度は優男と一緒にいる。

なにやら楽しそうに話をしていて、そっちばかりが気になってしまう。


櫻井の言葉に、適当に返しながら。

さっき、どうにか蓋をしたはずのザワザワとしたものが。

チラチラと顔を出そうとしていたのを必死で抑えていた。


「そういえば、俺に何か話があったんじゃなかったか?」

「あぁ…、うん。なんだったかな。そんな大したことでもなかったんだけど」


櫻井が思い出したとばかりに話を振ってきて。

それにしどろもどろになりながら返す。


この場所で。

この状況で。


神崎ゆずが好きだなんて、言えるわけがない。


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