二回目の恋の始め方
たまに勉強会は取り止めになって息抜きデーになる
そして今、突然決まった動物園に現在居たりする
朝、やって来た私に直美が叫んだのだ
「ストレス溜まる」と
「癒されたい」と
私達は受験生でしょ?と呆れ顔の私に直美は「よし、動物園に行こう」と立ち上がった
一度言い出したら聞かない直美に仕方ないと頷いた私だったけど奏と太陽が声を揃え「ユイは直美に甘すぎる」と呟いた
自分でも直美には甘いと思うけれど、こればかりは仕方がない
フフンと得意気になる直美はイソイソと用意し始める
勉強道具はさっさと片付けて、お出掛け仕様に早変り
フンワリとウェーブするフワフワの髪を整えながら実に嬉しそうだ
今思えば、この時が一番楽しかったのかも知れない
幸せ過ぎて、ユックリと近付く運命に片足を踏み入れた事に少しも気付かなかった
動物園を楽しんではしゃいでた私に直美がボソリ囁いたんだ
「今度は例の彼と二人で来ないと...ね」
その言葉を彼が聞いてたなんて...
そして拳を握りしめ苦々しく直美を見てたなんて...
彼があんな事を考えてたなんて...
私は知らない
「プッ‼見てあのボス猿太陽ソックリ‼」
「んじゃ、アレはユイだな?ピーピー鳴いてちっこいの...」
「ユイは子猿って言うよりコレだろ?」
そう言って奏に渡されたのは黒猫のぬいぐるみだった
黒色の猫は目付きが悪く睨み付けてる様にも見える
可愛らしいけど、ムムムと睨み付ける私
目付きが悪いって言いたいのかとジッと見ると奏がフッと笑う
「ばぁーか、冗談...ユイはコレ」
そう言って再び渡されたには対照的な白猫のぬいぐるみだった
黒猫より一回り小さな白猫はつぶらな瞳でキョトンとしてる
でも、憎めない顔立ちで後でコッソリお土産で買って行こうと考える私に奏が
「...やる」
少しだけぶっきらぼうに呟いた
思わず受け取ったのが白猫で黒猫まで貰えると思って無かった私は黒猫を奏に返す
がーーーー
「違う...お前はコッチ」
そう言って白猫を奪われ黒猫を渡される
「そしてコイツは俺の...」
そう言いながら頭上に翳すと白猫の鼻にチュとキスを緒とした奏
そして真っ赤になって口をパクパクする私を見ながらニヤリ笑う奏は次の瞬間ブハァと吹き出す
「ッ、ハハ...ユイのその顔!」
どうやらからかわれたみたいでプリプリ怒る私と奏を見ながら直美が呟く
「黒いのは奏みたいなのに...分かりやすっ...ね?太陽?」
「...ああ、そうだな」
ふざけ合う私達を見ながら地団駄を踏む直美
「奏の奴、さっさと告れば良いのに...焦れったい‼」
今日、目付きの鋭い黒猫が手に入った。ちょっぴり奏に似てると思ったのは内緒だ
奏の通学用鞄には似合わない白猫のキーホルダーがその日以来ぶら下がる
ソレから暫くは真面目に勉強会は開催された
夏が来て、受験生の私達は勉強に明け暮れた。特に学力の高い高校へ行く三人は一日中ノートにかじりついてた
それでも夏祭りに4人で行って花火をみたり、林檎飴を買ったり、金魚すくいに奏が必死になったり、子供の様に射的に夢中になったりするのを見て、奏を少しだけ可愛いななんて思った
私達は同じ所に四人で居ても自然と二人に別れる事になるのが多くなった
私と奏。太陽と直美。
太陽と直美は相変わらずラブラブで仲が良い
奏を見てると胸が弾にドキンと高鳴る事が増えて、キュンと苦しくなる事が多くなった
しかし、ソレが恋だなんて、気付かない私は奏の隣が凄く心地よくて、ずっと居たいなんて思った
直美がプールに行きたいと駄々を捏ねたけど、来年行こうと約束して、プールには行かなかった
来年行こうと約束した私と直美はウキウキしながら一年先の計画を考える
来年を楽しみにしながら勉強した為か成績が上がってお小遣いが少しだけ増えた
奏には黒猫のお礼だと言ってクッキーををあげた
事の他喜んだ奏にリクエストされ、次はマドレーヌを焼く事にした
そう言えば奏は昔から甘党だった
太陽が俺にも寄越せと言って私が作って来たクッキーを奪い取る
直美が今度作るからと言うも何故か不機嫌な太陽
太陽は奏とは正反対で甘いものが苦手だったのに、作って来る度に奏から奪いムシャムシャと食べる姿を目撃する
奏と太陽の話す頻度が段々と少くなる
喧嘩したのか聞くも二人はそうかもしか言わないし、直美に聞くも困った様に笑うだけ
心なしか直美の笑顔もぎこちなく見える
ずっと集まって勉強してたけど行きづらくなり一日行かなかったら太陽から鬼の様に着信が有った
何と無く出づらくて出なかったら今度は直美から電話が掛かって来た
「風邪引いて寝てた....ごめんね太陽も奏も電話してたみたいだけど謝っといて」
と誤魔化し直美に嘘を付いた