二回目の恋の始め方
帰りのホームルームが終わり、帰りの準備に取り掛かる私の耳にキャーキャーと騒ぐ女の子の声が届く
「校門の所に誰か立ってんだけど?」
「ってかアレって東の制服じゃん‼」
東の制服と聞いて直美の顔が思い浮かぶ
窓から顔をソッと覗かせるとソコに居たのは
「え...奏?」
有名な進学校の制服に身を包んだ奏だった
校門の所に怠そうに立ってスマホを弄る姿
風に揺れ奏の髪がフワリと舞い上がる
私の声が響いてた様で女子が騒ぎ始める
「え、もしかして今村さんの知り合い?」
「もしかして彼氏?」
「あーやっぱイケメンは彼女持ちかぁー」
キャァキャァはしゃぐクラスメイトの女子に「違う違う!幼馴染だから!」と誤解を解いておく
私と誤解されたんじゃ奏に申し訳ないとヘラリ笑う
何処に言っても女子と言うものは恋愛話に余念がなく楽しそうだ
タイミングを見計らったように私のスマホが鳴る
案の定、着信は奏でワクワクした様に注目される
苦笑いし電話に出ると少し低い奏の声が響き渡る
「......ユイ?」
普段の声が電話越しだと甘く聞こえるから実に不思議だ
どうやら奏の声が聞こえてた様で女子が騒ぐ
「キャーユイだって‼」
窓の向こうで奏がヒラヒラ手を振る
「外見て」と言われ、見てると言うと「手ぇ振って」と返され、オズオズと手を振ると
「あーソコに居るのやっぱりユイだったかー」と電話越しに奏が笑う
「早く出てこい」と言われ戸惑った様に返事をした
「う、うん...」
何だろ?と俯く私に「キャー今村さん真っ赤になってる‼可愛い!」と笑われた
「早く行って!彼氏がお待ちかね!」と茶化されもっと赤くなる私
真っ赤な顔のまま、じゃねと手を振ると「じゃねーまた明日~」とニッコリ笑うクラスメイトの女子
その日を境に打ち解けた私は後日、奏に「ありがとう」って言ったけど、奏は何の事だかわからないって顔してた
校門前に居た奏は凄く目立って誰もが振り返ったりして注目を集めてた
私の姿を見つけた奏が柔らかく笑うだけで胸が高鳴る
「か、奏...どうしたの?」
少し焦った私に奏は照れた様に鼻の頭に指を付け囁いた
「デートでもどうですか?お嬢さん?」
周りの目が気になりながらもボンと火が付いた様に真っ赤になる私に返事は?と奏が聞いてくる
キャーキャーと騒がしい校門前から一秒でも早く逃げ出したくて「う、うん分かった」と返事をすれば、「じゃ、行こう」と手を引かれる
「か、奏?」
ズンズン進む奏は電車に乗っても手を離さない
戸惑う私を他所に奏が連れてきた場所は昔良く遊んだ公園だった
「此処でさ...ユイが楽しそうに遊ぶの良く見てた」
突然呟いた奏は私をブランコに座らせユックリ動かした
奏がジッと見つめてくる
思わず目線を反らす私
「俺の初恋ってユイだったんだ」
知ってた?とクシャリ笑う奏は次の瞬間ソッと頬を撫でてくる
「スッカリ消えたと思ってた気持ちを呼び起こしたのもユイ
だから責任とって俺と付き合って」と私以上に真っ赤になる奏
そんな奏を同じ様に真っ赤になりながら見つめる私だったけど
「あんま見んな...クソッ」と悪態付くから
そんな姿が凄く可愛く見えてしまった私はもう、おしまいなのかも知れない
ああ、奏が好きだって分かった
分かったって言っても、本当は何と無く気付いてた
もしかして奏の事が好きかもって気付いてた
「...返事は?」とせっかちな奏に「...はい」と思わず照れた様に答えた私だけど
「...」
驚いた様に固まり動かなくなる奏に此方が戸惑う
数秒後、動き出した奏は「マジで?」と聞いてくる
ムッとしながらどう言う意味だと聞く私に奏は照れた様に鼻の頭に指を付けた
「俺の片思いだと思ってたから」とクシャリ笑う
こうして両想いになった私達は付き合う事になった
その日の夜、直美に報告する私
直美は喜んでくれると思っていた私は
「...そっか...おめでとう」と直美の静かなおめでとうに顔を傾けた
その日の夜、太陽から電話が掛かってたけど、お風呂に入ってた私は気付かなかった