Another moonlight
「おい、今の…。」

「切れてた。間違い電話かな…。」

「ユキ、もしかしてまだ…。」

また電話が鳴った。

ユキは再び受話器を取って耳にあてる。

「はい、Snow crystalです。」

今度は切れてはいないようだ。

アキラは予約の電話だったのかと思ったけれど、やはり違うとすぐに気付いた。

ユキはサロンの名前を言ってから、無言で受話器を握りしめている。

「……もしもし…?」

そう呟いてからユキは目を見開いて、慌てて受話器を置いた。

「ユキ、今のなんだ?」

「……なんでもない。」

また電話が鳴り、ユキは思い詰めた表情で受話器を手に取った。

「はい、Snow crystalです……。」

ユキは受話器を耳にあてたまま、涙目になっている。

「貸せ。」

アキラはユキの手から受話器を取り上げ、耳にあてた。

「“今日もかわいいね。でも肌の露出はもう少し控えた方がいいよ”」

アキラの耳に、ボイスチェンジャーを通したと思われる機械的な音声が聞こえた。

「おい!オマエ誰だ!!なんのためにこんなことしてやがる!!」

アキラが怒鳴ると電話は切れた。


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