今夜、あなたの胸で……《完全版》
「もう……遅いよ」


「何で?」


「何で、って……」



わたしは、今はもう悠貴と付き合っているんだよ?



「彩未は今でも俺のことが好きだろ?」



自信満々にそう言った琉生は、抱き締めていた腕の力を緩めてわたしの顔を覗き込んでくる。



「好き、だろ?」



視線を合わせながらもう一度そう訊いてきた琉生の声はとても力強くて。


その上、真っ直ぐに見つめてくるその瞳には、そらせなくなるほどの熱がこもっている。


今は琉生に想いはないはずなのに。


悠貴のことだけを好きなはずなのに。


それなのに、わたしは……。
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