今夜、あなたの胸で……《完全版》
そのまま遠ざかっていく背中を見ていると、瞳の奥が熱くなって、あっという間に涙がこぼれた。


悠貴はなにもかも知っていながら傍にいてくれたんだ。


きっと、わたしが今でも琉生のことを好きだということにも気づいていた。



『辛いなら、俺に寄りかかれば?』


『俺なら彩未にそんな顔をさせない』


『俺が、その幼馴染みのことを忘れさせてやるから』



そう言ってくれたときの悠貴は凄く頼もしくて、ほんとにそうしてくれるんじゃないかって思えた。


けれど、わたしの中の琉生との時間は簡単には消えてくれなかった。


結局わたしは、わたしのことを好きでいてくれている悠貴のことをただ利用しただけになってしまった。


そんなつもりはなかったのに。


気づいたらドアの外へ姿を消してしまった悠貴のことを追いかけていた。
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