今夜、あなたの胸で……《完全版》
手首を掴まれたまま、その手をぐいっと自分の目線までもっていく。



「これっ!」


「はは、やっと気付いた」


「……」



琉生が口付けた左手の薬指には、ダイヤモンドという名の石が埋め込まれた指輪があって。


パッと琉生を見上げると、瞳を細めてやさしい笑みを浮かべている。



「女……だけど、ただのジュエリーショップの店員だから」



わたしの髪をすくようにやさしく撫でながらそう言った琉生。


だけど、ただの店員に『今から行く!』なんて言い方をする?


普通は『今から行きます』とかじゃないの?


なんてことを考えていると、わたしが信じていないように見えたのか、琉生はふっと笑う。



「その店員、高校ん時のバイト仲間なんだ」


「え」



バイト仲間……だとしたら、親しそうに話していたことも、『今から行く!』という言い方も納得がいく。
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