今夜、あなたの胸で……《完全版》
ちゃんと好きなのに、予想外の質問に言葉が出てこない。
そんなわたしを見て琉生はふっと笑う。



「ほらな。即答できねー。ほんとはそんなに好きなわけじゃねーんだろ?」


「ちがっ……」


「違わねーよ」


「……」




悠貴と付き合い始めたのは、叶わない恋に終止符を打つためだった。


悠貴はわたしがずっと幼馴染みのことを好きだと知っていた。


それが片想いだということも。


ただ、その幼馴染みがアイドルの琉生だとは知らないけれど。



普通なら会わなければ忘れられるのかもしれない。


けれど、琉生はテレビをつければいつも出ているし、街中のあらゆるところで微笑んでいる。


だからいつまでもわたしの心に居座り続けていた。


そんなとき悠貴が言ってくれた言葉……



『辛いなら俺に寄りかかれば?』


『俺なら彩未にそんな顔はさせない』


『俺が、その幼馴染みのことを忘れさせてやるから』
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