今夜、あなたの胸で……《完全版》
悠貴は男友達の中では一番気を許せる相手だった。


落ち込んでいるときはいつも傍にいてくれたし、嬉しいことがあったときは悠貴も自分のことのように喜んでくれた。


いつもやさしく気にかけてくれる悠貴が凄く頼もしく見えて。


そんな悠貴の傍にいられたら、わたしはきっと琉生を忘れられる、きっと幸せになれる……と思った。


だからわたしは差しのべられたその手を掴んだんだ。



それから半年、いろんな場所で琉生を見ることはあったけれど、以前のように辛くなったりすることはなくなった。


穏やかな気持ちで、ブラウン管の向こうにいる琉生を見ることができるようになった。



そしていつの間にか、わたしの中で悠貴の存在が大きくなっていた。
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