あの日ぼくらが信じた物
「いや、だって……前にみんなでハイキング行った時には一番先に音を上げてたからさぁ」


 ぼくは慌ててそう付け足したけど、デリカシーが足りなかったかもなんて反省する。


「フフ、解ってるわよ。でもあきらくんてば、もう少し女心を勉強しないとね」


「ははは、あきらぁ。みっちゃんに一本取られたなぁ」


 父はぼくの事を笑い飛ばしながらもズンズン歩を進める。

すると間もなくぼくらは頂上に辿り着いていた。



  ピュゥゥゥゥ



 穏やかだった風も打って変わって吹きすさび、ぼくらはそれと戦いながら昼ごはんを食べている。


「鈴木さん。雲行きが怪しいですね」


「念の為に携帯ラジオを持ってきてるんで、聞いてみましょう」


 みっちゃんパパが持ってきたラジオが言うには、夜にかけて暴風が吹き荒れるんだそうだ。


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