あの日ぼくらが信じた物
「みっちゃんちは大丈夫なんだろうか」


 うちの本格的なテントに比べて、ただ大きなオニギリのようにしか見えないみっちゃんちのテントは想像の中でも弱々しく、ピュッと風に吹き飛ばされた。


「みっちゃんちのテントが飛ばされたら、うちのに入れてあげようね」


 ぼくはみんなに聞こえないように父へ耳打ちする。「当たり前じゃないか」と父は言っていたけど……。



風は更に強くなって───────



 夕方になるといよいよ勢いを増した風に、ぼくらは夕食を作るのも往生させられていた。自慢の立てカマドは壊れそうな程軋んでいるし、何より軽い薪はすぐ飛ばされてしまって、中々火が起きないんだ。


「素人臭いが仕方ない」


 父は太い薪に塗装用のシンナーを染み込ませて燃やし、なんとか火を起こしていた。みっちゃんちもどうにかこうにかカマドから煙をたなびかせている。


< 113 / 236 >

この作品をシェア

pagetop