あの日ぼくらが信じた物
「大変だ。テントを畳め! いや丸めろ。母ちゃんは鈴木さんちの様子を見てこい」


「あいよ、父ちゃん」


 阿吽の呼吸で母はみっちゃんちのサイトに向かう。ぼくは父と協力してテントを手繰り寄せ、木にロープでぐるぐる巻きにした。


「でも父ちゃん! ぼくたちどこで寝るのさ!」


「鈴木さんちの車を借りるしかないな」


 ぼくらの車は放り込んだ荷物で既に一杯だった。うちの愛車はきちんと整理して積まないと、人が乗るスペースが作れない


「鈴木さんちも車一杯よ? だからテントで一緒に寝ましょうって」


 偵察に行っていた母が戻って来て言う。当然先に飛ばされているだろうと思っていたみっちゃんちのテントは、なかなかどうしてしっかりと踏ん張っていた。中に居る人が重しになるその構造が幸いしていたようだ。


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