あの日ぼくらが信じた物
 そう言ってからぼくは『しまった』と思ったけど、殴られるならそれでも一向に構わなかった。

腰が立たない程ボコボコにされて、ふて腐れて寝てしまえるならどんなに楽だったろう。

だけど父はそんなぼくを怒るどころか、それ以上何も言葉を継がなかった。ぼくの落ち込みようはそれ程酷かったみたいだ。


「ごめん、父ちゃん。父ちゃんに当たったってみっちゃんが良くなる訳じゃないのにね……ぼく、もう寝るね」


「おお、あきら。お休み」


「あきら、おやすみなさい。余り考え込むんじゃないよ? ウウッ……グスッ」


 さめざめと泣いている母の声を階下に聞きながら、ぼくはベッドでタオルケットにくるまった。

そしてみっちゃんが4年の新学期初日に教壇の脇でした挨拶を思い出す。


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